1.はじめに

酒田市・鶴岡市をはじめとする庄内地域の新築注文住宅では、構造計算をしていない木造住宅が多いようです。

2021年4月から「建築士から建築主に対する省エネ性能の説明の義務化」により、建築士は建築主に対して、地域基準ごとに定められた省エネ性能数値に適合しているかどうかを説明する事になりました。更に2025年4月からは「省エネ性能の義務化」が待ち受けております。

2050年のカーボンニュートラルを見据えて、省エネ性能住宅が求められて来ることは必須になり、ロシアのウクライナ侵攻、円安、木材を始めとする物価の高騰は予想を遥かに超えました。私達の日常に大きな影響をもたらす電気料金の高騰は「どうしたら電気料金の安い住宅が出来るのか」と言う切実な悩みにもなっております。

勉強されてる方はご承知の通りですが、国の定めたこの省エネルギー基準は「最低限の数値」です

この数値をクリアしたとしても、「冬は暖かく、夏は涼しい住宅」になるかは別問題なのです。従前より住んでいた住まいと比較すると、向上するでしょう。

しかし、より省エネで、快適な住空間を作るためにはどうすれば良いのか?

省エネ等級6(断熱等級6)以上の住まいの作り方については、下記「暖かい家を創る5つのポイント」をクリックして下さい。

更に、最近では、「HEAT20G2グレード以上」クリアする住宅こそが、求める最低限の基準であると言っている方々も多く見受けられます。

「HEAT20G2グレード以上」についての詳しい事は、下記の、なぜ「HEAT20G2グレード以上」にしなければいけないの?をクリックして下さい。

今回は、本題が「構造計算」というテーマでお話を進めておりますので、「地震」について詳しく検証していきたいと思います。

木造住宅は昔から長年住み続けてきた歴史があり、構造計算しなくとも安全に住み続けられるという間違った固定観念があるように思われます。

 大きな地震があるたびに、壊れた建物が、どうして倒壊したのか等々調査をし、倒壊しないようにする為にはどのようにすれば良いかを検討し、法律は改正されてきました。

地震国日本では、地震は避けては通れない事は充分ご承知の事と存じます。

特に最近は、小さい地震から大きな地震迄、頻繁に起こっております。

熊本地震のように震度7の地震が、2度来ても倒壊せず少しの補修工事で住み続けられる住宅、そんな住宅が求められているのです。

【良くある質問Q&A】どうして耐震等級3の家を建てなきゃいけないの?下記をクリック

2.構造計算をしてない木造住宅ってあるの?

構造の安全性を考えるという観点から「構造計算」は必須だとは思いますが木造住宅において、この「構造計算をしている住宅どのぐらいあるのでしょうか?」

皆さん不思議に思ったと思います。「構造計算している住宅がどの位あるのか」という私の問いに「えーどうして」という風に疑問を持たれた方が多いのではないでしょうか?

そうなんです!

木造住宅において地震に対する耐震性能がどの程度あるのか?

例えば「耐震等級3」にする為にはどうしなければいけないのか等の「構造計算」をしている住宅はほんの一握りなのです。

「びっくりしましたか?」

実は建物には建築基準法で規定されております1号建築物から4号建築物まであり、木造の新築住宅は、ほとんどが4号建築物に入るのです。

4号建築物とは?・4号建築物確認の特例とは?の詳細は下記をクリックして下さい。

4号建築物であるほとんどの2階建ての住宅は、ご承知の通り、住宅を新築する時には、建築主事のいる役所及び国交省の指定機関に 、建築確認申請を提出し、建築主事から、法令に適合している住宅で有るか否かをチェックをして頂きます。

この確認申請を提出する時に「建築士が設計をした住宅については構造計算書を提出をしなくても良い」という特例があります。

以上のことから建築士が構造計算をしていれば、まだ良いのですが、構造計算をしていない、又は計算したと言っても基準法で定められている仕様規定に則っただけの計算であれば、本当に熊本地震のように震度7の地震が2度」来ても倒れないような住宅であるかどうかは、確認はできないそんな住宅がほとんどなのです

恐ろしいことですが、現状はそれが事実であります 。

3.大地震がある度に、法律は改正されたが、実際建築されてる住宅は?

 果たして、法律に適合した住宅が建築されているのでしょうか?

前章でもお話ししました通り、ほとんどが4号建築物である木造住宅は、確認の特例を受けている為、構造計算書の提出が義務化されていないので、建築主事のチェックを受けていないままに建築確認済証が発行され建物は建築されてしまうのです。

近年では1995年の阪神淡路大震災を受けて2000年に法律が改正され木造建築物の仕様規定 (構造安全性に関する最低限のルール)は、大きく変わりました。

以下「仕様規定」について、簡単に触れておきたいと思います。

①壁量計算

   改正はなし。従来通り地震力圧力に対して耐力壁の量を確保する計算

②四分割法

   2000年改正による壁量計算による耐力壁の量だけではなく配置のバランスを確認。

③N値計算

  2000年改正による。耐力壁両端柱の柱頭柱脚に発生する浮き上がり金物を算出する。

④基礎の配筋

  布基礎、べた基礎の断面寸法、根入れ深さ、地盤面からの高、配筋が具体的に示された。    

「仕様規定」最低限守らなければいけないルール>>>計算項目も少なく簡易計算です。

以上のような規定になってはおりますが、残念ながら建築士の中には確認申請時に出さなくていいから、構造計算をしなくていいと思っている人も沢山いるんです

構造計算ができなかったり建築基準法に書いてあることをよく知らない建築士もいるんですよ。

確認申請が OK だから 建築基準法に適合している建物として捉えていますが、現状は実に恐ろしい事が起こっているのです。

建て主のあなた!「地震でも壊れない安全な家を建てて欲しい」ってお願いした時に、建築士は何て答えてくれましたか?

「大丈夫ですよ。一生懸命作りますから!」

と答えている建築士が多いのです。

何を根拠に「大丈夫ですよ」と言ってるのでしょうか?

今までの経験と勘を元に手抜き工事をせず、一生懸命に家を設計して建てることが根拠となっていることが多いのではないでしょうか?

しかし、お建てになるあなたは、「地震に対して安全で丈夫な家を建てて欲しい」と言ってるわけです。

会話はできていても思いはかなりすれ違っているではないのでしょうか?

建築士の中には構造計算が必要だと思っている人もいるようです。 

しかし、そんな建築士でも誰かがどこかで構造計算をしていると勘違いしていることが多いんです。

どういうことかと申しますと、最近は昔のように大工さんが墨をつけて、切り込み・刻みをするということは100%と言っていい位ありません。

業者に発注をすると、柱や梁の組み方、材料の寸法が出てくるんです。図面が出てくると建築士は構造計算してくれたと勝手に勘違いしているんです。

又、建築する時に地盤の強さを確認するために、地盤調査を依頼するわけですが地盤調査業者から地盤を補強する案や、基礎形状の提案があると、建築士は構造計算してくれたと勘違いしたりしてるわけです

「えっ、ほんと!誰が構造の確認をするの?」

家の骨組みとなる柱や梁の組み方材料の寸法や地盤調査結果から、地盤の補強方法基礎形状決めるのは、建築士の大切な設計の一つである筈なのです

以上のようなことからお互いに、相手が構造計算をしてると思っているだけで、実際は誰もやってない。これが実情です。

4.木造の家も保険をかけてるから安心だよね???

建築士や建て主のあなたも「保険があるから大丈夫だと思っていませんか?」

この保険の根拠となっているのは住宅の品質確保の促進等に関する法律で建築基準法に適合した住宅の瑕疵が基準になっているのです。

「構造計算していない住宅は、建築基準法は守られていない事があるって言ってたよね」

構造計算をしていなければ保険をかけても、いざという時保険金が出ない可能性があるのです。

新築を考えている皆さん!「保険を掛けているから安心ではないのです」 

5.構造計算には、計算の方法が3種類あることはご存知でしたか?

簡単にその3種類を説明させていただきます。

① 仕様規定

2階建ての木造住宅では、一番簡易的な「仕様規定」を満たす事が最低条件ですが、検討項目が少なく、これで安全性を判断する事には項目が少なすぎるのです。

「仕様規定」の場合は下記をご参照して頂ければお分かり頂けますが、「水平構面」「横架材の検討」「基礎の検討」をしていないので、熊本地震のように震度7の地震が2度来た場合に倒壊は免れないと思います。

「耐震等級1」レベルの住宅です。

「耐震等級」についての詳しい事は下記をクリックして下さい。

仕様規定」には、3つの簡単な計算と8つの仕様ルールがあります。

 <3つの簡単な計算>

  1.壁量計算

  2.壁の配置バランス

  3.柱の柱頭柱脚の接合方法

 <8つの仕様ルール

  1.基礎の仕様

  2.屋根ふき材等の緊結

  3.土台と基礎の緊結

  4.柱の小径等

  5.横架材の欠込み

  6.筋交いの使用

  7.火打ち材等の設置

  8.部材の品質と耐久性の確認

になります。

② 品確法による性能表示の計算

性能表示の計算は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に規定されている計算で耐震等級、耐風等級、耐雪等級などの計算があります。

長期優良住宅は性能表示計算で「耐震等級2」を確保する必要があります。

性能表示計算は、した方が良いのですが、全ての安全性について計算しているわけではなくて横架材・基礎の検討は、「スパン表」から条件を決めて計算した表から断面鉄筋量を選択します。詳細に計算していない分、安全側の値を取るので経済的にはならない事が多いです。

建築基準法の最低基準である仕様規定よりも安全性が高い計算です。

床倍率の計算偏心率の計算も行います。

この計算で「耐震等級3」をクリアする住宅であれば、熊本地震のように震度7の地震が2度来ても、少しの補修工事で住み続けられる住宅となります。

最低でも、性能表示計算による「耐震等級3」をクリアする住宅を推奨致します。

「参考」佐藤 実著 ”楽しく分かる木構造入門”より

③ 許容応力度計算

許容応力度計算は3つの計算の中で、最も詳細に計算する方法です。

木造の3階建てなどに必要となる計算です。この許容応力度計算を一般的には「構造計算」と呼ぶ事が多いです。

許容応力度計算をクリア出来るように建てれば家はとっても安全で丈夫になる事は間違いありません

「参考」 佐藤 実著 ”楽しく分かる木構造入門”より

6.まとめ

「新築をし、お建てになったお住まいで生活しているあなた!」

「これから新築住宅をお考えのあなた!」

もしかしたら、「構造計算」をしていないお住まいに住んでいらっしゃったり、新築する住宅は、地震に対して安全でない家を、お建てになる事になるかもしれません。

ではどうしたら良いのでしょうか?

「構造計算」をしないで、建てたお住まいで生活されているあなた!

耐震診断の資格を持っている建築士耐震診断をして貰って下さい

耐震診断の結果、お住まいの住宅の「上部構造評点」がどの位の値になっているのか、倒壊するのか、しないのかが判ります。

更に上部構造評点1.5耐震等級3と同程度)の構造にするには、どこをどのようにすれば良いかを相談して下さい。

熊本地震のように震度7の地震が2度来ても、わずかの補修工事で長く住み続けられる住宅「耐震等級3」の住宅にする)にするには、どこを、どのように、どうすれば良いのかを提案してくれるはずです。

これから、新築を考えているあなた!

クドクドと長く説明をして参りましたが、許容応力度計算で「耐震等級3」をクリアできる住宅が一番ですが、性能表示計算による「耐震等級3」を実現出来る住宅であれば、熊本地震のように震度7の地震が2度来ても、僅かな補修工事で長く住み続けられる住宅を手に入れる事が出来ます。

建築士が設計する4号建築物確認の特例で、構造計算をしてしない建物は論外ですが、簡易な「仕様規定」の計算では、安全な耐震性が確保されるとは言い難いからです。

木造2階建ての住宅であっても、構造計算をきちんとやっているのかどうか

是非、施工会社に訊いてみて下さい。

施工会社選びの参考になるかもしれません。

もっと詳しい事を知りたい方は下記をクリック!

以上